健康生活よもやま話

健康生活に関するお話を、
薬剤師・管理栄養士が紹介します。

「花粉症とアレルギー」

【佐野薬局武蔵境店 薬局長 遠藤雄大】

今年(2023年)の春の花粉飛散量は、例年より増加した地域も多く、辛い思いをされた方も多かったのではないでしょうか。現在では治療法や対策も様々なものがあり、過去の記事でも取り上げられてきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
https://www.sano-ph.co.jp/yomoyama/8673
https://www.sano-ph.co.jp/yomoyama/7757
https://www.sano-ph.co.jp/yomoyama/4142

さて、今回はそんな花粉症に関わるお話を一つさせていただきます。花粉症の方は、薬の服用により症状を緩和したり、そもそも花粉になるべく触れないように生活したりするなど、様々な治療法や対策で花粉症状を緩和できるように努力されていると思います。ただ、花粉症の方が注意しなければならないのは、花粉そのものに対するアレルギー症状だけではないのです。それは、花粉症の人に起きる可能性がある食物アレルギーである「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS :pollen-food allergy syndrome)」です。
(※有機アルキル化合物のPFAS:polyfluoroalkyl substancesとは異なる内容です)

何らかの食材による口腔内の反応を「口腔アレルギー症候群(OAS :oral allergy syndrome)」といい、その中でも花粉症の方がその花粉との交差反応(似たような構造をもつ別のたんぱく質に反応すること)を持つ果物や野菜を摂取した際に生じるアレルギー反応をPFASといいます。PFASは、野菜や果物が口腔粘膜に接触すると、その直後から数分以内に口腔や咽頭、口唇粘膜の刺激感、かゆみなどが起こります。多くは口腔内だけで起こり自然に良くなりますが、場合によってはアナフィラキシーショックを引き起こすため、注意が必要となります。

しかし、野菜や果物に含まれるたんぱく質の多くは熱に弱いことから、加熱調理をすることで摂取が可能になることもあります。違和感があれば摂取を中止することで症状がおさまるので、厳密な除去は必要ないことが多いと言われていますが、少しでも異常を感じたことがある方は摂取しないことをおすすめします。微量でもアナフィラキシーショックになる場合もあるため、繰り返しにはなりますが、十分に注意するようにしましょう。

2024年も例年より多めの花粉飛散量になる予想です。お時間に余裕のある方は、ご自身の花粉や食物へのアレルギー検査をしてみてはいかがでしょうか。事前に知っておけば、万が一の時に備えることができるかもしれません。

PFASの例

花粉

交差反応が報告されている食物例

カバノキ科 

例:ハンノキ、オオバヤ、シャブシ、シラカンバ

バラ科(リンゴ、モモ、アーモンド)

マメ科(大豆、ピーナッツ)

マタタビ科(キウイフルーツ) 等

ヒノキ科

例:スギ

ナス科(トマト) 等

イネ科

例:オオアワガ、エリ、カモガヤ

ウリ科(メロン、スイカ)

ナス科(トマト)

マタタビ科(キウイフルーツ)

ミカン科(オレンジ)

マメ科(ピーナッツ) 等

キク科 ブタクサ属

例:ブタクサ

ウリ科(メロン、スイカ、キュウリ)

バショウ科(バナナ) 等

キク科 ヨモギ属

例:ヨモギ

セリ科(セロリ、ニンジン、スパイス類:クミン、コリアンダー)

ウルシ科(マンゴー) 等

 

参考
・食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022 (foodallergy.jp)
・口腔アレルギー症候群|一般社団法人日本アレルギー学会 (jsaweb.jp)
・アレルギーガイドライン2021 ダイジェスト版 第14章 (jspaci.jp)
・花粉飛散予想ウェザーニュース (weathernews.jp)
画像:いらすとや https://www.irasutoya.com/