皆様は、“漢方薬”についてどんなイメージをお持ちですか?「なんとなく体に良さそう」「副作用がない」「苦い」…。人それぞれに様々なイメージをお持ちのことと思います。
今回は、そんな“漢方”のお話をしたいと思います。
◆漢方の歴史
漢方は、漢の時代に大きく発展した医療体系です。紀元前の古墳から医書の断片が出土しているので、おそらく約3000年以上の歴史があると考えられています。日本には6世紀頃に伝来し、東大寺正倉院には当時の生薬がその記録とともに納められています。漢方薬に使う生薬の多くは輸入する必要があったため、日本では室町時代以降に広く普及しました。その後、明治政府により制定された医術開業試験制度で西洋近代医学が採用されたことにより、漢方医学は衰退していきますが、現在では、漢方エキス剤が保険適用となり、また医学部での講義も増え、広く漢方薬が処方されるようになってきています。
◆今、なぜ漢方が見直されているのか?
・漢方薬は病原菌を直接殺したり、特定の臓器に強く作用するというものではなく、体の抵抗力を強めたり、消化吸収力を高めたり、新陳代謝を促したりというように、間接的に病気を治す力を向上させる作用を持つものが多くあります。つまり、健康の基本である快食・快眠・快便に寄与し、近年盛んに言われるQOL(生活の質)の向上にもつながっているのです。
・現代医療の中において、既に使用されている化学薬品の新たな薬理作用が解明されるのと同様に、近年では、漢方薬(生薬)の薬理作用が急速に解明されつつあります。それに伴い、漢方薬の内分泌・免疫・神経系のシステム調節作用が次第に明らかになってきました。
・現代医薬品と漢方薬の薬理作用の長所と短所を相互に補完する事を目指して以下の様な目的で併用されるようになってきました。
①現代医薬品の局所的直接効果と漢方薬の全身的効果の相乗効果を期待する。
②現代医薬品の副作用軽減のために漢方薬を併用する。
③現代医薬品の減量の為に、漢方薬に置き換える。
④急性の症状発作時に現代医薬品を使用し、寛解期には漢方薬を使用する。
◆“未病”を治して健康生活
未病とは、病気が表面には表れていなくても、体の内部では病気が作られている状態です。漢方では未病のうちに病気の発生を予防できる医者を「上工(じょうこう)」と呼んで尊敬するとともに、日頃の養生の大切さを説いています。
自分の体質診断、季節の養生法、食養✽など、“漢方”には健康な生活を送るための様々な知恵が詰まっています。皆様も是非“漢方”を身近なものとして生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
✽食養(しょくよう):病気を治すというよりも予防するもの、また未病を改善する食事療法のこと。ふだん私達が食べている食材の性質や効能を理解し、その人の体質や体調に合わせて食材を選び、日常の食事に取り入れること。
参考資料
新中医学入門テキスト 上海中医薬大学付属日本校
漢方診療のレッスン 花輪壽彦著 金原出版
いのちを養う漢方講座 髙山宏世 葦書房