今年の3月末に離乳食でハチミツを飲んでいた6か月の乳児が亡くなりました。原因は「乳児ボツリヌス症」。1か月前にけいれんや呼吸不全で入院していたそうです。この乳児は入院の1か月前からハチミツを市販のジュースに混ぜて1日約10gを2回分けて飲んでいたことがわかっています。乳児ボツリヌス症にかかると便秘が数日間続き、全身の筋力低下や哺乳力の低下、泣き声が小さくなる等、筋肉が弛緩することによる麻痺が特徴で、重症になると呼吸困難になる場合があります。
厚生労働省はこの事故の後、1歳未満の乳児にハチミツを飲ませないように、あらためて全国自治体に注意文書を出しました。実はこのような文書は昭和62年にも出されています。これまでにハチミツなどによる乳児ボツリヌス症の報告はありましたが、亡くなってしまったことはありませんでした。母子手帳の離乳食のポイントというページには「ハチミツは乳児ボツリヌス症を予防するため、満1歳までは使わない。」と記載されています。残念ながら、乳児の家族はハチミツが1歳未満の乳児に飲ませてはいけないことを知りませんでした。
ボツリヌス菌は、芽胞の状態で、広く環境中に存在しているため、食品によっては、環境中からの移行等により汚染されている可能性があります。乳児ボツリヌス症は食物などとともに口から入ったボツリヌス菌の芽胞が腸の中で発芽して増殖し、その時にできる毒素でかかります。
芽胞とはボツリヌス菌が増殖できない時でも長く生きることが出来るように形を変えているもので、休眠状態となっている形です。1歳未満の乳児では腸の働きがまだ発達していないため、食物などの中でじっとしていた芽胞が乳児の腸管で活動を再開してしまったということです。困ったことにこの芽胞を殺菌するためには120℃で4分以上か、これと同じくらいの加熱が必要ですので、私たちの生活の中では無理な方法です。残念ながら100℃程度では、いくら長い時間加熱しても殺菌できないのです。
ハチミツは「おいしくて栄養価がたかい」「抗菌や保湿の効果もある」などの健康イメージから人気が高くなっています。大人の滋養強壮には良いのですが、あらためて1歳未満の乳児へハチミツを与えてはいけないことを認識し伝えていきましょう。
参考資料
東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/anzenjohokan/files/botulinum.pdf
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html
産経ニュース
http://www.sankei.com/life/news/170418/lif1704180015-n1.html