腸内フローラという言葉を耳にしたことはありませんか?
腸の中には細菌が数百兆個以上も生息していて、その集まりはまるで植物が集団を作って咲きほこる花畑のようであることから腸内フローラ(腸内細菌叢:ちょうないさいきんそう)と呼ばれています。最近の研究により腸内細菌または腸内環境のバランスの乱れによって自己免疫疾患、アレルギー疾患、がん、肥満症、認知症、うつ病などの様々な病気の発症や病態に影響を及ぼしていることがわかってきました。ほかにも腸内細菌叢の特徴により疾患リスク予測に使用できないかなど現在も様々な研究が行われています。このように腸内細菌の中には私たちの健康にとても密接に関係しているものあり、ぜひ知ってほしいものを紹介します。
○ 腸内細菌の種類
・ 善玉菌:乳酸菌、ビフィズス菌など
人にとって良い影響をもたらす
・ 悪玉菌:ウェルシュ菌、大腸菌(毒性株)など
発がん物質や毒素を作ったり、腸内腐敗を起こす
・ 日和見菌:バクテロイデス、嫌気性連鎖球菌など
状況により善玉菌、悪玉菌の優勢な方に傾く
○善玉菌の働き
善玉菌は乳酸や酢酸などを作り、腸内を酸性にすることで、悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にし、食中毒菌や病原菌による感染の予防や発癌性をもつ腐敗産物の産生を抑制する腸内環境をつくります。
また善玉菌は腸内でビタミン(B1・B2・B6・B12・K・ニコチン酸・葉酸)を作ったり、消化管の粘膜免疫を高めます。さらに善玉菌を構成する物質には、からだの免疫力を高めて血清コレステロールを低下させる効果があるとも報告されています。ほかにも幸せな気分をもたらす物質であるドーパミンやセロトニンの合成を促し、その前駆体を脳に送るなどその働きは多岐にわたります。
○善玉菌を増やすには?
発酵食品を食べる
ヨーグルト・チーズ・乳酸菌飲料・納豆・漬物などビフィズス菌や乳酸菌を含む食品を毎日続けて摂取することで善玉菌を継続して腸内に補充すると効果的です。善玉菌は生きて大腸まで到達しないと意味が無いと思っている方もいるかもしれませんが、善玉菌を作っている成分にも有効な生理機能が期待できますので、必ずしも生きて腸まで届く必要はありません。
善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂る
食物繊維やオリゴ糖は野菜類・果物類・豆類などに多く含まれています。消化・吸収されることなく大腸まで達し、善玉菌の栄養源となって増殖を促します。腸内細菌のなかにもともと存在する善玉菌に、好きなエサを優先的に与えて、数を増やそうという考えです。
オリゴ糖は、大豆・たまねぎ・ごぼう・ねぎ・にんにく・アスパラガス・バナナなどの食品にも多く含まれていますので、これらの食材を食事に取り入れると良いでしょう。また市販されている特定保健用食品などを利用するのもひとつの方法です。
○理想のバランスがある
腸内細菌のバランスの理想は善玉菌、悪玉菌、日和見菌の比率2:1:7 このバランスが崩れると様々な不調がでてきてしまいます。
腸内細菌は食習慣(タンパク質、脂質中心の食事)以外にも、ストレス、便秘、過労、抗生物質、加齢などの様々な要因によって変化します。
健康維持のためには善玉菌が元気な腸内フローラを整えることも大切です。日々の食習慣や生活習慣に気をつけてみましょう。
参考資料
腸内細菌叢の基礎 モダンメディア(2014);60巻10号:307-11
株式会社明治ホームページ https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/
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