桜から新緑が芽吹く気持ちの良い季節となりました。野山へ出かけ、山菜を取りに行かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。岩手出身の父はたけのこ掘りが好きで、先日もたけのことシドケを送ってくれました。とりたての山菜はおいしいものです。
しかし、食べても安全な山菜や野草と間違って有毒な成分を含む植物を食べてしまうことによる食中毒が数多く起きています。ある程度以上の量を食べてしまうと、重症になったり、死に至ることもあるので注意が必要です。はっきり分からない山菜は食べないようにしましょう。食べ方を間違うと危険なこともある山菜などの植物ですが、厳格な品質管理の下、薬となっているものもあります。いくつか紹介したいと思います。
<トリカブト>
ニリンソウやモミジガサ(シドケ)の葉とよく似ていて、間違われやすいです。
毒は根茎に多く含まれていますが、植物全体、特にその芽、葉にもアコニチンなどのアルカロイドを含有しており、手足の痙攣、しびれ、呼吸麻痺などの中毒症状を起こし、重症の場合には死亡することもあります。
トリカブトによる死因は、心室細動や心停止です。
一方、漢方としてトリカブト属の塊根は附子(ぶし)と称して薬用になっています。
毒性が強いため、附子をそのまま生薬として用いることはほとんどなく、修治と呼ばれる弱毒処理が行われます。強心作用や鎮痛作用があり、牛車腎気丸、桂枝加朮附湯、麻黄附子細辛湯のような漢方薬に入っています。
<ハシリドコロ>
芽吹いたばかりのふきのとうによく似ています。
ハシリドコロは、植物全体、特にその芽と葉に、副交感神経を麻痺させるアルカロイドが含まれ、誤食すると嘔吐、けいれん、昏睡、呼吸停止などの中毒症状が起きます。
一方、生薬「ロートコン」はこの根茎及び根で、漢方薬には配合されていませんが、主にロートエキスの原料になり、制酸薬、鎮痛鎮痙薬、止瀉薬などに配合されています。
成分の硫酸アトロピンは注射液や点眼液があります。
このように薬として病気の治療薬にもなる薬用植物ですが、間違った使い方をすると身体に有害作用を与え、さらに、量を増すと死亡することがありますので充分注意が必要です。
※皆さんが飲まれている薬も同様に間違った使い方をすると、健康被害が現れることがあります。お薬は病気や年齢によって飲み方や量(用法・用量と言います)が異なることがあります。またその方の体の状態(腎機能など)によっても変わってきます。調剤薬局では薬剤師が処方された薬の内容や、その方の薬の服用した記録を確認させて頂いております。お薬を受け取る時には誤った服用による健康被害を防ぐため、「用法・用量」をよくご確認ください。
参考
農林水産省HP:http://www.maff.go.jp/index.html