2025.04.25 健康生活よもやま話

市販薬とアンチ・ドーピング

[執筆者]

銀河薬局開運橋店 薬局長 古川篤

ドーピングとは競技能力を高めるために禁止されている薬物や方法を用いることです。そして、このようなドーピング行為が起こらないように、また、見過ごされないようにするための検査や啓発活動のことをアンチ・ドーピングと言います。
大会前に急な体調不良により薬を購入して使用する場合には確認が必要です。市販されている薬でも禁止薬に指定されているものがあります。禁止薬を不注意に使ってしまうとアンチ・ドーピング規則違反と判断され、重い罰則が科せられてしまうことがあります。特にドーピング検査を受ける可能性のある選手や、その保護者や指導者は注意する必要があります。
市販薬を購入する際に注意が必要な薬はたくさんありますがその一部を紹介します。

・かぜ薬や花粉症薬などは禁止物質エフェドリン類(麻黄、半夏も含む)やメトキシフェナミン、トリメトキノールを含んでいるものが多く、これらの成分表記がある薬剤は使用禁止です。
・口内炎の薬の中には糖質コルチコイド(トリアムシノロンアセトニド等)を含む物があります。頬の内側や歯肉、舌など口の中に糖質コルチコイドを使用する場合は禁止されます。
・漢方薬、生薬のなかで、麻黄(マオウ)、半夏(ハンゲ)は禁止物質エフェドリン類を含みます。丁子(チョウジ)、附子(ブシ)、細辛(サイシン)、南天実(ナンテンジツ)、呉茱萸(ゴシュユ)などは禁止物質ヒゲナミンを含みます。のど飴にはヒゲナミンが含まれているものもありますので注意が必要となります。胃腸薬に含まれることもあるホミカは禁止物質ストリキニーネを含みます。このように禁止物質を含有することがはっきりしている漢方薬はありますが、それ以外でも、漢方薬はすべての含有物質が明らかになっているわけではないため、「禁止物質を含まない」と断定することができません。

同じように見える商品名でも、その前に「新」の文字がある場合や、後ろに「A」や「S」などアルファベットの違いにより配合成分が異なりますので注意が必要です。(公財)日本スポーツ協会の「アンチ・ドーピング使用可能薬リスト」に、使用できる処方薬や市販薬が記載されていますので参考にしてみてください。禁止薬物は毎年改定されていますので、必ず最新版を見るようにしましょう。
使用する前には主治医や購入する薬局薬剤師に相談するのが良いでしょう。サノ・ファーマシーには専門の薬剤師「スポーツファーマシスト」が在籍している店舗もございます。ドーピングを恐れて薬を使用しないのではなく、使用できる薬を使い万全な体調で大会に臨みましょう。

参考
知っておきたい アンチ・ドーピングの知識 2024 年版
公益社団法人日本学生陸上競技連合:https://www.iuau.jp/news/2024/anti2024.pdf
薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック2024年版
日本薬剤師会:https://www.nichiyaku.or.jp/yakuzaishi/activities/anti-doping/about
公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構:https://www.playtruejapan.org/
全日本剣道連盟:https://www.kendo.or.jp/knowledge/anti-doping/co33/
北海道薬剤師会:https://www.doyaku.or.jp/guidance/data/R4-1.pdf
公益財団法人日本スポーツ協会:https://www.japan-sports.or.jp/
画像 いらすとや https://www.irasutoya.com/