2015.06.16 健康生活よもやま話

貼り薬のあれこれ

[執筆者]

南町田薬局 管理薬剤師 金子 礼子

皮膚から吸収され効果をあらわす貼り薬についてのお話です。

皆さまの中には皮膚は人間のからだの最前線!異物などの無断侵入を防いでいるはずなのに何で貼り薬は効くの

と思っている方もいらっしゃいますよね。

皮膚には私達のからだを守るための機能があるのですが、次にお話しするような工夫をして薬を体内に吸収されるように開発されたものが【経皮吸収型製剤】といわれている【貼付剤】です。

皮膚は表面から、表皮(角質層があります)~真皮~皮下組織となっていて真皮には皮下組織から伸びた毛細血管が入り込んでいます。

脂溶性(脂にとけやすい)の高い物質を、濃度、適度な温度、皮膚に接する時間の長さなどの影響を考え毛細血管に到達させ全身に移行させているのが【経皮吸収型製剤】です。

もともと皮膚からも薬が全身作用として吸収されるのではないかというヒントは、1960年代に米国において 素手でステロイドホルモン原料抽出の仕事をしていた作業員が体調異常(ステロイドホルモンの副作用)をきたしたことで、製薬会社の研究者が 「ホルモン原料が皮膚吸収されている」ことに気付いたことにありました。

そして従来の患部を温めたり、冷やしたりして局所的に効果を現わす貼り薬とは違って、全身に作用する薬を皮膚からゆっくり投与するという考えにもとづいた貼り薬がつくられました。

経皮吸収型製剤の特徴として内服薬にくらべて

①肝機能への負担が減る。

②胃腸への負担が減る。

③使い方が簡単。

④作用の持続が期待できる。

⑤はがすことで薬理作用を中断できる。

            などがあげられます。

これらの特徴を生かした様々の薬があります。

皆さまに一番馴染みのあるのは

痛み・炎症を抑える成分が パップ剤やテープ剤になったものだと思います。

他にも狭心症予防薬、気管支拡張剤、女性ホルモン剤、禁煙用にニコチンが貼り薬になっています。

さらにがん性疼痛を緩和する目的で

長時間(3日間)痛みをコントロールできるようにした製剤もあります。

このように経皮吸収型製剤は馴染みのお薬となってたくさん使われてきておりますが、皮膚本来のバリヤー機能が損なわれる「かぶれ」が起きる方がいたり、

はがしたあとをそのままにすると有効成分が残ることも忘れないでください。

ご使用の際には、添付されている説明書や注意書きなどを必ず確認してください。

わからない点がありましたら薬剤師におたずねください。

出典

日東電工技報85号(42巻)2004年 「水と生命」を育む「膜」科学

公立学校共済組合関東中央病院情報誌「緑のひろば」2010年9月号

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ウィキペディア日本語版 ヒトの皮膚の構造