2020.12.25 健康生活よもやま話

ヒートショックに注意

[執筆者]

佐野薬局白金町店 薬局長 波多野 智宏

寒い日が続いています。こんな夜は熱いお風呂にゆっくり入って...なんて思いますが、今の時期のお風呂には注意が必要です。入浴中に亡くなる方は厚生労働省の報告では1年間でおよそ19,000人。このうち、高齢者が入浴中に浴槽で死亡する事故が冬場に多く起きています。昨年1年間の死者数は4,900人に上り、2008年の約1.5倍です。事故は11月~翌年3月の発生が多く、原因の多くは「ヒートショック」である可能性があります。
家族が集まる居間などには暖房器具があり暖かいですが、日本では浴室とトイレが日当たりの悪い家の北側にあり、寒いことが多いです。暖房器具を置く習慣がない地域もあり、温度差が10℃以上になることもあります。

冬場の入浴では、暖かい居間から寒い風呂場へ移動するため、熱を奪われまいとして血管が縮み、血圧が上がります。
そして、熱いお湯につかると血管が収縮し血圧が上がります。
ゆっくり湯につかるうちに逆に血管が広がって急に血圧が下がります。
お風呂をあがって寒い脱衣所に移動することで、また血圧が上がります。
短時間の急激な温度変化により、血圧が何回も変動することになります。
寒いトイレでも似たようなことが起こりえます。

血圧の急上昇は心臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中につながりかねません。血圧の急激な低下は意識消失を生じることがあります。もし、入浴中に起こればそのまま溺れてしまうこともあります。高齢者・肥満気味・高血圧・脂質異常症・糖尿病・不整脈・動脈硬化が進んでいる人は特に注意が必要です。

入浴中の事故は「持病がない場合」・「前兆がない場合」でも起こるおそれがあります。
「自分 は元気だから大丈夫」と過信せず、「自分にも、もしかしたら起きるかもしれない」と意識 することが大切です。また、本人だけでなく家族や周囲の方が一緒に注意することが大切 です。

消費者庁は、高齢者による「冬場の入浴事故」について、防止策を発表しています。
■入浴中の事故を防ぐための注意ポイント
(1)入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう。
(2)湯温は 41 度以下、湯につかる時間は 10 分までを目安にしましょう。
(3)浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。
(4)食後すぐの入浴、アルコールが抜けていない状態での入浴は控えましょう。
(5)精神安定剤、睡眠薬などの服用後の入浴は危険ですので注意しましょう。
(6)入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらいましょう。

できることから日常生活に取り入れ、ヒートショックに注意しましょう。

参考 消費者庁 日本医師会 中野区医師会 豊川市薬剤師会
イラスト https://www.irasutoya.com/