2022.09.12 健康生活よもやま話

歯科健診の話題

[執筆者]

オレンジ薬局片倉店 管理薬剤師 加藤 晴人

全ての国民に歯科検診を義務付ける制度導入の検討が本格化するかもしれません。いわゆる「国民皆歯科健診」について、政府が5月末に公表した経済財政運営の指針「骨太の方針」の原案に盛り込まれました。丈夫な歯を維持することで心身機能の低下や病気を防ぎ、年々増加する医療費の抑制につなげることが目的です。そこで今回は歯と歯周病に影響される疾患や医療費について話したいと思います。

◆医療費
平成元年に厚生省(当時)と日本歯科医師会が提唱した「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という『8020運動』があります。当時、歯周病で歯を失う方が多く、80歳で20本以上の歯を保つ75歳以上の高齢者は10人に1人もいませんでした。しかし、多くの先生方の努力があり、2016年の歯科疾患実態調査によると、75~84歳の達成者は半数以上に上るようになりました。
年齢を重ねても、自身の歯で食事を楽しめるようになっただけでなく、年間医科医療費は、残存歯数が「0~4本」の人は「20本以上」の人の約1.5倍多いことが分かりました。

◆影響される疾患
歯周病は細菌性疾患で、細菌感染によって引き起こされる炎症によって様々な疾患に影響があります。
◇狭心症、心筋梗塞
歯周病原細菌が血管内に入り込むことによる炎症で発症する場合があります。
◇誤嚥性肺炎
 歯周病原細菌等の口腔細菌が肺に入ると発症する場合があります。
◇早産・低体重児出産
 中度以上に進行した歯周病をもつ母親はリスクが高いことが報告されています。
◇糖尿病
 歯周病により生じる炎症が血糖値を低下させるホルモンであるインスリンの効力を弱くする可能性が報告されています。
◇その他
 関節リウマチ、慢性腎臓病、非アルコール性脂肪性肝炎などの発症、進行に影響を与えるという報告があります。

◆オーラルフレイル
高齢期における人とのつながりや生活の広がり、共食といった「社会性」の維持には心身の衰え「フレイル(健康と機能障害の中間)」を予防する必要があると言われています。最近は滑舌低下、食べこぼし、食欲低下、むせ、噛めない食品が増える等の口腔機能の衰えを「オーラルフレイル」と呼びフレイルの一つとする考え方があります。口腔ケアは、社会性を維持する一助となる可能性が示されました。

◆私の想い
当薬局には、虚血性心疾患、糖尿病の患者様が多く御来局されます。健康的な生活、楽しい食事を末永く続けていただきたいと心から願っております。
上記のような持病を持つ患者様が定期的に歯科健診を受けることは、健康寿命の延伸に良い影響があると考えております。特に糖尿病患者様は、高血糖が歯周病を悪化させ、悪化した歯周病が更に糖尿病を悪化させるという負のスパイラルが報告されているため、健診を強くお勧めいたします。
是非、しっかり歯を磨きましょう!時にはデンタルフロス(歯間清掃用の糸)の使用も良いでしょう!!朝は起床時や食事前に歯を磨くと良いです!!!皆様がいつまでも元気に笑顔でご来局されることを願っております。

参考資料
生活歯援プログラム 日本歯科医師会
歯周治療のガイドライン2022 日本歯周病学会
オーラルフレイルパンフレット 日本歯科医師会
画像:いらすとや